大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成6年(行コ)45号 判決

控訴人(原告) 疊谷幸子

被控訴人(被告) 社会保険庁長官

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立て

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が控訴人に対し平成元年一一月三〇日付けでした船員保険遺族年金を支給しない旨の決定を取り消す。

第二事案の概要

事案の概要は、原判決の「第二 事案の概要」に記載のとおりである。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所は、原審の審理の結果に当審における審理の結果を加えて検討しても、なお本件請求は棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりである。

1  原判決一〇枚目裏末行の末尾に「なお、労災保険制度が生活保障の性格を有し、損害賠償制度とその目的を異にするとしても、それは、あくまでも職務に起因する労働者の損失を填補することに限られるのであって、職務との相当因果関係を必要と解するべきである。」を加える。

2  原判決一三枚目表末行の「同年二月」を「同月」と改める。

3  原判決二二枚目表四行目の「昭和五四年」を「昭和五六年」と改める。

4  原判決同二四枚目表九行目の後に行を変えて「また、当審で提出された甲第三九号証(須田医師の鑑定意見書)の記載も、冠動脈硬化症は動脈硬化が全身に及ぶとは限らないこと、進行した冠動脈硬化症であっても安静時の心電図に異常が現れないことがあることを指摘しているにすぎず、乙第一九号証に照らしても、通雄に冠動脈硬化症の基礎疾患があったことを推定することはできないというべきである。」を加える。

5  原判決二五枚目裏四行目の「ある程度」を削除し、同六行目の「ないこと」の後に「(なお、日本郵船の船員就業規則六五条では、陸上休暇は年間勤務期間に対し九〇日と定められているところ(乙第五号証)、甲第一九号証、乙第一〇号証によれば、本件航海前一年間の通雄の乗船していない期間が合計一三八日あることが認められる。)」を加える。

6  原判決二七枚目裏一〇行目末尾に「当審証人久木一彦は、乗船業務が下船まで職場で居住し、勤務時間以外も緊張が持続することや、交替勤務の特殊性、近代化船における労働の強化の実態、航海の安全確保のために高度の緊張を要すること、特に、マラッカ海峡通過時における操舵の困難性等を述べるが、通雄の担当する業務が船員一般の業務、特に運航士の通常の業務に較べて過酷であったということを述べるものではなく、本件航海時における運航士の業務に携わる資格と能力を有していた通雄にとって、本件航海における業務の負担が通常と異なり過重であったと認めることはできない。」を加える。

二  以上の次第で、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとする。

(裁判官 高橋欣一 三輪和雄 浅香紀久雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例